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が不要となる為、LNG生産設備コストが大幅に低減し、ひいては中小ガス田でも経済性が成立する可能性が生ずる。
FPSOの利点は沖合における原油生産の場合に浮体式生産・貯蔵・積出し設備が既に多数(30数基稼働中)実現し、原油生産コストの低減に寄与していることからも容易に推測できるが、LNG生産の場合は、主に従来方式の大規模化によりコスト低減を図っており、LNG FPSOは実現していない。
LNG FPSOが実現していない主な理由としては沖合で生産したLNGを洋上で貯蔵するのに適した大型LNGタンクが従来無かったためと考えられ、SPBの実現ではじめて具体性をおびた。
ちなみに、LNGは非常な低温(−162度)である為、長距離海底パイプラインにより陸上へ送る事は技術的にもコスト的にも実用上問題がある。従って、沖合に洋上タンクを設けることなくLNGプラントのみを、浮体上にせよプラットフォーム上にせよ、設置してLNGを生産し陸上タンクに送って貯蔵するという方式は成立し難い。即ち沖合にLNGプラントを設置する場合はLNGタンクをその近傍に置くことが実用上必須となる。
図5はSPBタンクを採用した最初のLNG FPSOの計画図である。1989年に北海用の設備としてヨーロッパのエンジニアリング会社等と共同研究したものである。
図6はSPBタンクを使用してIHIが独自に設計した浮体式LNG生産・貯蔵・積出し設備(LNG FPSO)でこれらのLNG FPSOは沖合浮体式LNG生産設備の諸課題、特にLNG生産中にLNGタンクが半載(中間液

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図5 190,000M3 LNG FPSO

Fig-5. 190,000M3 LNG FPSO

位)状態で問題となりうるスロッシング(波浪中で浮体が動揺することにより生ずるタンク内液動現象)等を既述の特徴を有するSPBLNGタンクを使用することにより全て解決し、これにより、新しい浮体式LNG生産設備が可能となった。
すなわち、本LNGFPSOは、沖合ガス田におけるLNG生産コストの低減を目的としてSPBタンクを用いて開発したもので、LNGの液化・貯蔵・積出しに必要なすべての設備を建造工場において浮体上に搭載した後、生産現地に回航し、ガス田付近洋上に浮遊状態で係留・設置する経済的な洋上LNG生産基地である。
3−2. LNGFPSOの特徴
LNGFPSOの特徴を要約すると次の通りである。
?海底パイプラインおよびLNG船用桟橋が不要であり現地の建設工事がわずかで済む等のため設備費が低コストとなる。
?現地陸・海の事前調査、準備等が少なくて済みまたFPSOの建造期間も比較的短いためプロジェクト全体スケジュールの短期化、従って開発等の投資の早期回収が図れる。
?FPSOは設備の整った造船所で建造されるので、現地のインフラストラクチャー、インフレーション、労働事情、政情の影響

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図6 SPBLNGFPSO

Fig-6. SPB LNG FPSO

 

 

 

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